冬の森、ぜフィルス(ミドリシジミ族)の越冬卵を求めて Ⅱ
前回は高原のブナ林に生息する、フジミドリシジミをとり上げたので、今回はごく里山に近いメスアカミドリシジミを紹介します。
この越冬卵は日本産ゼフィルスの中で最も大きく美しい一つで卵のひとつで直径1ミリ強。ルーペでのぞくと、おまんじゅう型の表面には100以上の明瞭な突起が並んでいます。
サクラ類の枝先先端近くに1卵ずつ産まれていますが、野外でも枝先をしっかり見ていくと、「あった...あった...。」よく見つけられます。
春先、孵化した幼虫は6月中旬、梅雨の始まり頃、里山の沢沿いなどによく姿を見せてくれます。
サクラの枝先に産まれたメスアカミドシリジミ越冬卵。ぜひルーペで美しさを楽しんでほしい
梅雨の始め頃、メスアカミドリシジミ2頭の雄がテリトリー卍飛翔を続ける
爆発の本白根山、高山植物と高山蝶のダメージは!?
只々、おどろくばかりの本白根山爆発ですが、私などナチュラリストにとっては、今春以降、はたして本白根山の生態系・動植物はどうなっていくのか....それが心配です。
本白根山の山頂一帯は広大な火口原にて、その取り囲むゆるやかな斜面には、岩礫地の中に、タデ類、スゲ類、高山蝶ミヤマモンキチョウの食草・クロマメノキ、小潅木などがみられます。
はたして、今シーズンの春から、コマクサやミヤマモンキチョウが無事でいられるか...私も大心配です。
私なりの判断では、今回の爆発は、本白根山頂エリアの北東の鏡池付近らしく、コマクサとミヤマモンキチョウのメインエリアである西側山腹ではないと思われ、また気象的にも爆風は東方向(草津方面)に吹いているのではと思います。
そのようなことであれば、なんとか本白根山の高山動植物は維持できるのではないでしょうか。
酸性土壌のためか、真っ赤なコマクサ
冬の森、小さな生命を宿した宝石たち(ゼフィルス卵 Ⅰ )
晩秋11月から早春3月までの約5ヶ月。蝶愛好家にとっては春からのワンシーズンのフィールドワークも終わりホッとする季節。
一年間の成果など思い出しつつ、標本や資料の整理などを行うひととき。
こんなオフシーズンですが、この季節ならではの楽しみは、ゼフ卵(ゼフィルス=ミドリシジミ族)の採卵行。コナラ、クヌギ、ミズナラ、ブナ、カシ類などの里山・高原の木々の枝先に産まれた直径1ミリそこそこの越冬卵を探し求めて、ひと枝ひと枝、目を皿のようにして小さな宝石を探していきます。
日本産25種のゼフィルスの卵は、その形の違いはもちろんのこと、いずれも産卵されている木やその産卵位置なども異なり、だからこそ見つけたときの喜びも格別...。
雪の下-20℃、新雪を冠ったブナ枝先の越冬卵。どこにあるか、わかりますか?
春先、越冬卵を食い破り、1齢幼虫が孵化する。
ブナ林の林縁の下草に止まるフジミドリシジミ雄
厳冬・上高地、撮影紀行
真冬の上高地。白銀に輝く穂高連峰、霧氷に覆われる大正池や田代池。清涼な梓川....。数えあげれば、その魅力に限りありません。
しかも近年は安房トンネルの開通により、釜トンネル入口までは年間を通して車輌通行可能なため、日帰りで訪れる写真愛好家やファミリーハイカーも増えました。
これは誰でも上高地の魅力を実感できることで良いことなのですが、反面かつての神秘・神聖な神河内が失われてゆきつつあり、寂しくも思います。
初めて冬の上高地を訪れたのは、40年ほど前。
当時は沢渡から撮影用具一式を小さな引きゾリに固定し、大正池まで6時間以上かけて辿りつきました。
翌朝、大正池はすべてが白く装い、湖面には無数の霧氷の結晶。その清澄な美しに、ひたすらシャッターをきりました....。
近年、温暖化のせいか、そのようなシーンには出会えません。静寂そのもの、いっさいの人の気配もなかった冬の上高地は、もはや出会うことはできません。
大気中の水分が湖上や枝先に付着結氷する